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散歩をした。いつもと特段変わった道ではないのに、知らない植物がたくさんあった。
マメ科の可愛らしい花。独特な色の立派な豆がなっている。おそらくクサネムという種類。数日後、稲刈りと共に刈り取られていた。
シソ科っぽい花。ヒメジソかな?と思うけど自信がない。
どことなく蕎麦っぽい花。おそらくミゾソバだと思う。別名が「ウシノヒタイ」というらしい。広そうな名前だ、と思っていたら、どうやら葉の形が牛の顔に似ている故の命名らしい。特に広くはなかった。
野生化した朝顔のような気がするが、よくわからない。
もうすぐ展示替えになってしまうので、行きたかった美術館に向かうことにした。展示は、4人の作家の作品がそれぞれ飾ってあるものだった。それぞれ油彩やエッチング、版画、鉛筆画と方向性が様々で、理解できる絵もあれば全く理解できないものもあった。
特に印象に残っているのは鉛筆で描かれた指揮者の絵と、版画の柿の木が描かれているであろうものだ。
前者は、靄のような空気の中に指揮者が立っているが、顔だけが際立って鮮明に描かれている。大きいサイズの絵ということもあり、そこに実在するかのような威圧感があって目が離せなくなってしまった。どきどきしてよかった。この人の絵は線の流れによる濃淡の付け方が、綺麗な3Dモデルのポリ割りみたいになっていて、整っている絵なんだな……と実感した。
後者は灰を背景に銀の丸や黒の線、その上に鮮やかなオレンジの丸が幾つもついている絵だった。無彩色ゆえに鮮やかな丸の配置が目をひく。配置的におそらく夜の、月を背景にした柿の木だろうな、と思われる。静かで冷たくて良い絵だった。同じ作者の、すすきの生えた野原を銀色の大きな月が照らしているポストカードを買い、部屋に飾った。
近くに地域の資料館のようなところもあったので、そちらにも入ってみることにした。最初のコーナーでは、布を型染めにする型紙が展示されており、海老と銭がくり抜かれた型紙が目についた。随分とご機嫌な柄だ。身につけたら金運が上がるかもしれない。歴史関係については正直ピンとこない資料が多かった。
地元で掘り出された鉱物や、化石や、土器などの自然史・考古学あたりの史料は見飽きることがなかった。他の鉱物に比べて雪花石膏の原石が丸みを帯びているところとか、カモシカの大きな剥製の毛流れとか。土木工事で木の運搬に使う船のような道具「修羅」を「すら」と発音しているらしいことも面白かった。
花火が打ち上げられていた。夏の終わりの花火なのか、秋の花火なのかは見当がつかなかった。部屋の電気を消して、紅茶を飲みながら眺めた。